JBC2019 について
今年も2019年9月11日〜3日の日程で
SCAJ2019
ワールド スペシャルティーコーヒー カンファレンスアンドエキシビジョン2019
が行われました。
SCAJというのが、
日本スペシャルティーコーヒー協会
という協会で、丸山珈琲の社長が会長をされています。
その協会が主催するアジア最大級のコーヒーイベントこそ
SCAJなのです。
コーヒーファンはこの年に1度の祭典
を楽しみにしている方も多いのでは
ないでしょうか??
さて、その中で行われるのが、
日本一のバリスタを決める
JBC2019
ジャパンバリスタチャンピョンシップ2019
という競技会の準決勝と決勝が行われます。
そのJBCで優勝すると、世界大会である
WBC
ワールドバリスタチャンピョンシップ
への出場権が獲得できます。
今年も予算を勝ち抜いた16名のバリスタ達が、
東京ビッグサイトに集まり、
協議を競い合いました。
そして、9月11日に行われた
セミファイナル(準決勝)
で6名に縛られたバリスタが、こちら
Unir 山本バリスタ
Unir 三村バリスタ
サザコーヒー 本間バリスタ
サザコーヒー 安バリスタ
Taka Ishitani 石谷バリスタ
サザコーヒー 飯高バリスタ
最終的に9月12日ファイナル(決勝)で
見事に優勝されたのは石谷バリスタでした。
そんなJBC2019 の様子は
youtubeや他のブロガーさんが
詳しくレシピなども含めて解説
してくれていると思います。
sakawaycoffeeでは
JBCとはどんなことを競い合うのか、
どんなところを見ているのか、
難しい語句が飛び交っているけども
つまりどういうことなのか、詳しく
解説して、JBCを知らない方でも
楽しめるようにしていこうと思います。
この記事は非常に長文になりますので
前編、後編に分けて投稿します。
競技ルールについて
まずJBCはWBCのルールに準拠して行われます。
JBCについての欄で軽く説明しましたが、
WBCというのが、
ワールドバリスタチャンピョンシップ
世界各国の代表が集まり、バリスタ技術の
最高峰を決める大会です。
ちなみに日本人で初めて、
WBCを制覇されたのが、
(アジア人で初です)
コーヒー好きの方なら聞いたことがあるかもしれない
井崎バリスタです。
井崎さんは現在フリーでバリスタ活動をされています。
細かいルールについてはルール規約を
見ていただくのが良いと思いますが、
sakawaycoffeeではJBCをわからない方や、
これからJBCを目指したい方向けなので、
掻い摘んで説明していきます。
今回は準決勝・決勝のルールで
説明します。
まず、評価をするのがジャッジといいます。
いわゆる審査員です。
JBCは全て横文字を使っているので、
日本語訳にするだけでもわかりやすくなることも多々です。
決勝のジャッジは9名で構成され、
お客さま役として、バリスタから、
接客とドリンクの提供を受ける
センサリージャッジ4名
YouTubeより引用
エスプレッソの抽出技術、
所作の美しさ等技術面を見ているのが、
テクニカルジャッジ2名
バリスタのフレーバーの宣言や、
重要点をメモチェックするのが、
シャドージャッジ2名
全てのジャッジを統括する
ヘッドジャッジ1名
が評価します。
YouTubeより引用
石谷バリスタの右の方がヘッドジャッジ
石谷バリスタの左側2名がそれぞれ、
テクニカルジャッジとシャドージャッジです。
バリスタは、準決勝、決勝では
3つのカテゴリー×4人分=12杯の
ドリンクを15分の制限時間以内に
作って、提供し、競い合います。
3つのカテゴリーはこの後詳しく説明をしますが、
・エスプレッソ
・ミルクビバレッジ
・シグネチャービバレッジ
です。
大会で使用できるグラインダーは
(コーヒー豆を粉末化する道具のことです。)
は2台まで使用可能で、SCAJが提供したものでも、
自身が持ち込んだものでもどちらでも
使用ができます。
今回2019大会で興味深かったのが、
サザコーヒー飯高バリスタが、
タブルグラインドを行いました。
本人のプレゼンの中にありましたが、
2回グラインドを行うことで、
豆の粉末の均一性を整える他、
豆の体積自体が減らすことができるので、
粉末の量を多く使用できる。
ということでした。
YouTubeより引用
どちらの粉末も25gで質量は変わりませんが、
明らかな体積の違いがあります。
これにより、バケッドにより多くの
コーヒー粉をいれることができます。
奥が深いなぁと思いませんか??
JBCはこんな風にいろんな手法を
バリスタそれぞれが考えて、披露する舞台です。
このほか、電気を使用する器具は2つ目の
グラインダーを含めて2台まで使用する
ことができ、
シグネチャービバレッジでコーヒー粒度を均一かつ
滑らかにするためにミキサーにかける方法をとる
バリスタもいます。
2019大会では優勝した石谷バリスタが、
AI等の普及でバリスタが必要なくなる
のではなく、お客さまの求めるクオリティも
上がるので、AIや、機械を駆使して、
レベルの高いドリンクを提供することが、
バリスタのこれからの仕事だと
プレゼンしていたのは興味深いですが、
石谷バリスタはそれにちなんで、
あえて、タンパーを使用せずに、
自動でタンピングしてくれる機械を
使用されていました。
YouTubeより引用
JBCではこのような機械も使用することができます。
なお、3種類のドリンクは
どの順番で、提供しても、作成しても
問題はありません。
しかし、例えば、エスプレッソを
2名のジャッジに提供して、
その途中で、ミルクビバレッジに移って、
提供することは失格になってしまいます。
エスプレッソの時には4杯全部出し切ってから
次の項目に移ります。
エスプレッソについて
エスプレッソは皆さんの馴染みのある
コーヒーを濃く濃縮抽出したものです。
エスプレッソでの工夫点は
Unir 山本バリスタが、
グラインダーの口に静電気除去装置を
取り付けていました。
YouTubeより引用
これはグランドの際に発生してしまう
静電気により、グラインダーの口に
コーヒー粉が付着してしまったり、
グラインドしたコーヒー粉自体が帯電して
固まってしまうのを防ぎ、
抽出のポテンシャルを上げる方法です。
またサザコーヒー本間バリスタは、
グラインダーに保冷剤を取り付け、
歯を冷却する方法をとっていました。
YouTubeより引用
これは、グラインドの際に発生してしまう、
熱がコーヒー粉に移ってしまい、
抽出の際の味の変化が生まれてしまうのを
防ぐための手法です。
このような様々な工夫をバリスタそれぞれが
考案して、最高の状態でコーヒーを抽出する
それがJBCなのです。
また、最高のエスプレッソの味わいを求め、
豆のブレンド、焙煎方法なども考えています。
バリスタはエスプレッソを提供する前に、
エスプレッソのフレーバーを宣言します。
たとえば、このエスプレッソは
ミルクチョコレート、パイン、マスカット、オレンジ
フレーバーとは、エスプレッソを口にしたときに感じる、
コーヒーではない、味わいや香りを表現します。
コーヒーに馴染みが浅い方は
コーヒーはみな同じで苦いとか
濃い薄いだけの違いだろ?
と思われている方もいるかもしれませんが、
実はコーヒーは栽培された、土壌や気候。
またコーヒーチェリーの生成方法。
(これらをプロセスといいます。)
そして、焙煎方法。抽出方法。
様々な要因が関わり、様々な味わいが生まれ、
それぞれに、「フレーバー」と呼ばれる、
果物や食べ物に似た味わいや香りが生まれます。
バリスタはそれを明確に提示し、宣言することで
お客さまにその味わいを想像しながら、
エスプレッソを味わっていただきます。
JBCではバリスタが宣言した、フレーバーが
しっかりと感じられるかどうか、という
審査基準もあり、そのフレーバーを感じられなければ、
減点ということもあります。
詳しくはJBCのルール規約と
スコアシートを見ていただくとわかると思います。
ここからはJBCでは難しい用語が度々
飛び交いますので、詳しく解説します。
「アフターフレーバー」にカカオの味わいを感じます。
と宣言したとします。
この場合は、口にした瞬間に、はじめに宣言した、
果物や食べ物のフレーバーを感じた後、
飲み込んで、味が引いていくときに
感じる味わいを表現しています。
「タクタイル」という用語が出てきます。
タクタイルという言葉を直訳すると、
触知できる、触覚的に感知できる。
といった意味があるようですが、
エスプレッソ的にとらえると、
粘度、粘性や口当たり、コク
といった部分がタクタイルと表現されます。
タクタイルはもはや感覚の世界ということですが、
それをも追い求めるのがバリスタなのです。
2018年大会でサザコーヒー安バリスタが
このタクタイルを味覚だけでなく、
触覚で感じてもらうために、プレゼンで
用いた手法が、布繊維を3種類用意して、
それを実際に触れてもらい。
私がエスプレッソで表現したいタクタイルは
こういうものです。と表現したのが、
非常に斬新でした。
2019年大会では、オイリーなエスプレッソ
ということで、そのエスプレッソを
飲まれた、司会進行解説を行っている
阪本さんが液体がトゥルトゥルしている
と表現されていましたが、タクタイルとは
まさにそういうことです。
「ディストディビューション」
これはエスプレッソの抽出技術に関わる部分になります。
エスプレッソの抽出はこれまで、
コーヒー豆を極細挽きして、
ホルダーにコーヒー粉を入れ、
均一にするためにレベリングを行い
タンパーでタンピングを行い
抽出といった形が一般的でした。
しかし、2015年のWBCあたりから
新たな手法として取り入れ始めたのがこの
ディストリビューションです。
もともとはITや金融での用語だったようです。
YouTubeより引用
これがディストリビューションを行っている
ところですが、この手法により、バケット内に
コーヒー粉を均一に配置することができ、
エスプレッソの味のムラやバラつきを
減少させることができます。
近年のJBCではほぼすべてのバリスタが
使用されている手法です。
2019年大会の決勝で使用しなかったのは
サザコーヒーの飯高バリスタのみです。
「ブラインドシェイカー」
YouTubeより引用
こちらもエスプレッソの抽出技術に関わることになります。
画像で安バリスタが振っているものこそ
ブラインドシェイカーです。
こちらも近年新しく取り入れられた手法で
グランドしたコーヒー粉を
ブラインドシェイカーに入れ、
振ることにより、
グラインドの際に発生してしまった静電気を除去し
また、コーヒー豆が持った
ガスを飛ばすことができるものです。
JBC2019について、前半は以上で
一旦締めます。
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